経済産業大臣認定 経営革新等支援機関

成果主義の人事評価制度はどの程度役に立つか?に関する書籍2冊

ベストセラーになっている「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」(副題は、「コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする」、ラレンフェラン氏)を、経営コンサルティングの同業者として非常に面白く読みました。



訳者(神崎朗子氏)のあとがきにもあるように、タイトルは強烈ですが、「コンサル批判」の本ではなく、「コンサルティングにおいて重要なのは方法論やツールではなく、対話である」「クライアント企業は経営をコンサルタント任せにせず、自分たちでもっとちゃんと考えるべきだ」という、ある意味当たり前のことが書いてあります。



この本のなかで、著者は、コンサルタントとしての長年の経験から、成果主義の人事評価制度について、「経営関連の施策にはまちがっているものや有害なものがたくさんあるが、これだけはただちに廃止すべきである。」と言い切っています。報酬については、「業界平均を少し上回る給与と単純明快な利益配当計画を提案する・・・考えに賛成だ。会社の利益が基準値に達した場合は、全員に同じ割合の報酬を支給する。」ことがベストとの考えです。



「スコア付けや評価をなくせば、上司と部下は協力して業績を向上させるための最も良い方法を自由に決めることができる。押し付けの制度がなければ、上司と部下の面談の頻度も好きに決められる。」「さまざまな駆け引きとも、きれいさっぱりおさらばできる。」とも述べています。



なかなか説得力がありますね。



最近出版された「経営参謀」(稲田将人氏)にも「数字責任を追及すればするほど、他責文化が芽生えやすくなるのでマネジメントには本当に注意が必要になる。」「成果主義の評価制度などが安易に導入されているとなおさらです。」と書かれています。



同じ趣旨と言ってよいでしょう。



今から10年以上前に出版された「虚妄の成果主義」(高橋信夫氏)ほど辛辣ではないですが、上の2冊ともプロセスを無視した単純な「成果主義」には批判的です。

たまたま今年に入って読んだ気になる本に共通のテーマだったので、取り上げてみました。



私自身も、何社かの中小企業の業績管理→人事評価制度の設計に携わったことがあります。

その時点で高橋氏の著作等、成果主義への批判本は当然読んでいましたので、機械的な評価に陥らないように、また目標管理と人事評価は相当に距離を置くように十分に考えたつもりですが、もっと工夫の余地があったかもしれないと、今になって反省することがあります。



人事評価制度について悩んでいる経営者の方は、ぜひお薦めの2冊です。



さて、「経営参謀」は、婦人アパレル企業を舞台にしてストーリーが展開されています。著者は実際にワールドや卑弥呼の経営改革に関与したとのことで、私自身の経験も重ねながら面白く読ませていただきました。アパレル関係者の皆様には、重ねてお薦めです。