経済産業大臣認定 経営革新等支援機関

システム上の原価を高めに設定することの善悪

販売管理システム上の原価は、商品(製品)マスターに品番ごとに登録することが通常です。

 

その際、実際の仕入原価(製造原価)が100であるのに、「高めに」に例えば105で登録して、営業が安売りをしないようにしている会社が散見されます。

 

原価を高めにしておけば、粗利額が厳しめに出るので、なんとなく保守的なように思えます。また、営業が安売りをしなければ、仕入しただけで(製造しだけで)確実に利益が確保できることになると、経営者としては一安心というところでしょうか。ここで「開発費を確保する」という発想もあるようです。

 

ところが、これが間違いの始まりということがままあります。

 

このパターンですと、損益計算上、在庫が増えると(売れなくても)利益が増えるというおかしなことになりますので、利益が出ているような気になっていたら、実は在庫が増えていただけ、ということが実際に起こります。そんな会社あるはずないだろと思われるでしょうが、何社も目の当たりにしてきました。

 

そういったことにならないように仕入(製造)原価と販売原価という2重価格制をとって、営業員は販売原価だけ見るようにするということをしている会社もあります。まあ、それでもいいのかもしれませんが、2重価格は面倒ですね(裸粗利と通常粗利などと概念が複雑になります)。営業員の最低粗利率を決めて守らせて、登録の原価は実際のものに近いほうが間違いがないとは思います。ここは好みでしょうか。

 

やや専門的になりますが、(直接費だけを考える)直接原価計算ではなく総合原価計算が税務上は求められますので、仕入や外注費以外の固定費の配賦も原価に行わないといけません。よく、税務署からの指導(?)で、在庫に間接費部分を上乗せして利益を増やしている企業がありますが、こういったこともシステム上の原価を単純な仕入単価以上に設定する背景にあるようです。

 

いずれにしても直接原価以上に在庫を評価している場合は、在庫が増えると損益が良く見えることになりますので注意が必要です。