日経プレミアムシリーズの「地銀波乱」を興味深く読みました。
森・前金融庁長官が地方銀行の優等生と持ち上げていたスルガ銀行の不正融資という局所的な問題は起きていますが、地域金融システムは全体として動揺していません。
しかし、地方銀行の凋落はずっと続いており、収益は低下傾向で、このままでは(単独では)生き残りが難しくなってきていると言われています。
東証一部の「低PBRランキング」を見ますと、驚くほど地銀(第二地銀)が並んでいます。なんと20位まですべて銀行です。40位まで見ても34社が銀行です。予想以上です。
1位 栃木銀行 0.11
2位 高知銀行 0.13
3位 千葉興銀 0.14
4位 山梨銀行 0.18
5位 大光銀行 0.18
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34位 武蔵野銀行 0.29 (以上、QUICK情報による)
貸借対照表の純資産にくらべて株式の時価総額がだんぜん低いわけで、これは将来の赤字を株価が見込んでいるか、不良債権等により時価でみた純資産はもっと低いと見込んでいるのどちらかです。現時点では不良資産は実際にそれほどないと思いますので、将来性のなさに焦点が当たっていると思います。
金融庁としては、ともかく「経営統合」で、と考えているようです。確かに対策としては、一番手に上がると思いますが、規模を大きくしても同じことをやっていたのでは、やはり低収益になってしまうと思います。
スルガ銀行は、面白かったのですがね。2003年には、独自性と収益力を両立する企業を表彰するポーター賞(一橋大学!が運営)を受賞していました。圧倒的に個人向け融資に力を入れて、ノンバンクを参考にした高い利率での住宅ローンで儲けていました。その後投資用不動産融資にのめりこんでいったようです。ノルマ営業も含めて、やり過ぎて、問題を起こしてしまったのですが、やろうとしていたこと自体を否定しなくても良いように思います。
地銀の行員の方々とは、いろんな場面で、お仕事を一緒にさせていただいております。
企業再生の現場では、メガ銀行の方々に比べて、紳士(淑女)的な対応をしていただき、感謝しております。
ただ、融資の姿勢は相変わらず(変に)手堅い印象ですし、質問とかの内容もまず通り一遍で、お客さんでなく(行内の)上をみて仕事をしている人が多い印象をもっています。もっと審査を深く(厳しくとは違います)行って、リスクを取って行かないと、存在意義がないような気がしているのは私だけではないように思いますが、組織にいるとそうもいかないんでしょうね。
さて余談ですが、スルガ銀行事件に端を発して、不動産取得のための融資がかなり出にくくなっています。
頭金が40%くらいないと断られてしまうようで、フルローンでガンガン融資が出ていた少し前までの状況と様変わりの状況です。
これがオリンピック後(または前)の経済状態と合わせて不動産市況の悪化を招きそうな予感がしています。