経済産業大臣認定 経営革新等支援機関

年初にPPMを再考する

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、ビジネスマンなら誰もが知っていると言っても過言でないフレームワークです。

会社で行っている複数の事業を、市場シェアと成長性によって、4象限に分け、市場シェアが高いけれども成長性の低い事業(金のなる木)で得たキャッシュフローを、成長性が高い問題児(シェアは低い)やスター(シェアも高い)に振り分け、負け犬(成長もシェアも低い事業)からは撤退する、というものです。

 

かなり古いフレームワークなので、私がビジネススクールに通っていた1990年代には否定的な意見も多かったです。

「成長戦略」の事業では、キレッキレの教授が、「PPMはcross-subsidaization(社内で儲かっている部門が、資金の必要な部門を補助金を出すこと)であり、正しくない。それぞれの事業が、見合う資本コストを払ってファイナンスすべきである。」といっていました。

「また企業の多角化に対しても、株主(市場)がそれぞれの事業を評価できるようにすべきであって、会社が勝手に(長く生き残るために)コングロマリット化するべきではない。」とも言っていました。

「成長戦略は、多角化ではなく、シェア拡大・垂直統合・水平展開または地域的拡大に尽きる」とも。

その話を聞いたときは彼我の発想の差に驚きました。

まあかなり学者の世界ですが、市場(株主)の理屈としては正しいかもです。

 

また、私がアメリカで受けたコンサルティング会社の採用面接(やや圧迫的なそれ)では、企業がいくつも事業を抱えているよりも、成長可能性のある(あるいは強みのある)分野に特化するというのが正しく、企業がリスク分散をするために多角化するのは間違いというのが好まれた回答だった(ように仕向けられました)のは、今でも記憶に残っています。

 

ただ、近年のM&Aの隆盛をみていると、企業が事業のポートフォリオをいくつか持って、シナジー効果(共通の経営資源の活用)を何とか出しつつ、同時に成長分野にシフトしていく、衰退分野からは撤退する、というのは、当たり前になってきています。そう意味では、やはりPPMの理屈は使えるように思います。

 

単一ポートフォリオの企業は、今回のコロナ禍のような危機に弱い(可能性がある)のは間違いないですよね。

簡単ではないですが、見直せるなら見直したいところです。

 

弊社(SQコンサルティング)を例にとりますと、もし事業再生のコンサルティングのみを行っていたら、このコロナ禍(に対する政策資金ジャブジャブの状態)では相当に追い詰められていたかもしれません。再生案件は春以降本当に少なかったですから。

中小企業分野には特化しているものの、正常企業の成長支援やM&Aにも事業分野を広げていたから、おかげさまで、メシが食えている状態です。

 

年初にあたり、改めて思いました。