経済産業大臣認定 経営革新等支援機関

事業経営と会社経営

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

2022年もよろしくお願いします。

 

早速ですが、1月9日号の日経ヴェリタスのトップ記事「再編巧者 起点は引き算」は面白かったです。

 

オリンパスが「祖業」である顕微鏡や産業用の測定装置などの科学事業(営業利益率10%超)を分社化して第三者に売却して内視鏡など医療分野に集中すること、JSRが合成ゴム事業の売却すること、三菱ケミカルが石油化学事業を分離すること、ブリヂストンが防振ゴム事業を売却すること、などの最近の事例から説き起こして、これらの動きはコーポレートガバナンス改革に沿ったもので、「現状維持では長期的に衰退する」という危機感は「株主視線でこそ生まれる」としています。

 

同時に、「従業員視点(経営者視点を含む?・・・筆者注)では、雇用維持や歴代経営陣への配慮から事業売却などの変化は避けがちである」とも書いてあります。これだけ人手不足の世の中で、「雇用維持」を事業「不」再編の理由にするのは、会社を弱くするとともに、日本全体の生産性を下げていることになると私も思います。

 

同じく、同紙の4面では、日本では、「メインバンクガバナンス」の残像があるのでは、という指摘もされています。「債権者はキャッシュフローが安定し返済力が高まる多角化を是とし、今の経営者もその価値感が根強く残る。」というのは慧眼かもしれません。

 

また、「事業再編の方程式、BS脳で考えよ」とあり、ベストセラーになった「ファイナンス思考」(朝倉祐介さん著で、「PL脳」からの脱却を主張されています)を意識した内容かと思いますが、ゴールドマンサックスによると「連結子会社が多い企業ほど総資産利益率が低い」、SMBC証券の集計では「事業数が多いほど予想PERが下がる」とのことです。

 

さらに、事業再編が進まない理由としては、「事業別のBSを把握してない企業が多い」(松田千恵子教授)の指摘もあります。「事業別のBSの作成が出発点となる」となり、事業別に投下資本利益率による管理を提唱しています。ここでのBSは、簿価ベースではなく時価ベースになることが前提(これが結構重要なのでは!)と私は付け加えたいですけど。

 

いずれの指摘も、当然と言えば当然なんでしょうが、ここまで明瞭にわかりやすく書いてある記事は珍しいと思いました。

私が20年以上前に学んだ米国のビジネススクールでは、1年目にCorporate Strategy(I)が、2年目にCorporate Strategy(II)が必修科目でしたが、Iは、徹底的に「事業経営」を取り上げ、IIでは、M&Aやアライアンスを含む「会社経営」を取り上げていました。両社の峻別がまず必要なのではないかと、改めて思った次第です。

 

それにしても、大企業が事業再編に力を入れて、強い分野に集中し、生産性をますます高めていくと、最初からポートフォリオが単一の中小企業との差がますます広がっていきそうな予感がしています。

ただ、一見、単一に見えても、得意先別や財別・サービス別に考えれば、中小企業でも再編の余地はあるとは思っていますので、大企業だけの話ではないとは思います。