金融機関勤務だったころ、目黒区の担当だった時期がありました。
その縁で、現在の私の事務所も目黒駅のそばにあります。
(目黒駅は品川区にあるのですが・・・)
最近、目黒駅近くを歩いていましたら、
あるメッキ工場に本社移転の張り紙がしてありました。
その会社の社長の印象はとても強烈で、今でも忘れられません。
ネットで調べると、順調に成長したその会社は
創業者の引退を機に、大手に買収してもらったようでした。
感慨深いできごとでした。
20年くらい前、
とても業績の良かったその会社の社長は、
設備投資をガンガンやっていましたので、
設備のための資金の融資はかなり受けていましたが、
運転資金の融資は絶対に受けないという主義で、
融資担当者の私を困惑させました。
曰く、「運転資金を借りると、返済のためにまた借りるという
地獄に陥るので、設備以外の借入はしない。」
「設備に対する資金であれば、その投資効果から返済原資が出せるが
運転資金からは何も産まず、銀行を利するだけ。」
円高の影響か何かで、業績見通しが不透明になったことがあったのですが、
その時は当然のように、借りていた設備資金の返済ストップ(リスケ)を申し出てきました。
試算表を見ても償却前ではかなりの黒字だったので、運転資金の融資はできますよ
との私の言葉に全く耳を貸してくれませんでした。
そのリスケ中に、公害防止設備の融資を申し込んできたので
返済を正常化しないとさすがに融資はできないと話をすると、
えらい剣幕で怒り出して、
そんなのだったら他の金融機関で借りておたくには全部返す、と
社長が言いだし、若かった私も、負けずに反論し、トラブルになりました。
支店の上役にとりなされて、なんとか大人の対応になりましたが・・・
今から考えると、「返済のための借入はしない」というその社長の姿勢は
とても真摯なものであったと思います。
借入金の返済が償却前利益(キャッシュフロー)を上回ることを
「固定資金不足」と呼びます。
中小ではこの状態にある企業が大半と思われますが、
リスケするか、リスケせずにあと何年で、その状態を脱することができるか、
今月で円滑化法が終了するこの時期に真剣に考えてみたいところですね。