経済産業大臣認定 経営革新等支援機関

原価から積み上げでの価格設定では通用しない

もう数年前の話です。

ベンチャーでの新規商品の価格設定にあたり、かなりの議論をした後に、

開発費(型費を含む)の減価償却を含む調達原価にある程度の利益を加えた価格設定にしました。

資金調達先VCや他の株主などの手前、赤字での設定は許されないという判断でしたが、

市場では、魅力的な価格とは言えず、インパクトに欠けました。

今から考えれば、市場で魅力的な価格設定を貫き、

原価との差(赤字分)は、数量UPによる原価低減で埋めるべきだったように思います。

あるいは型費の回収はある程度断念して、償却前での黒字だけは死守するとか、にしたよかったとも思います。

 

売上数量が上がっているうちは、新規の資金調達も付きやすかったとも考えられます。

(ベンチャーは特にですが)赤字であることよりも、成長しないことの方が問題です。

新規の資金調達が上手くいっていれば、第二弾の商品でなんとかなったかもしれません。

完全に後講釈ですけど。

 

最近読んだ「シャツとダンス」(玉置美智子さん著、文芸春秋)では、

「鎌倉シャツ」の成功物語が描かれています。

そのなかで、

「シャツを4,900円にしたのは、自分が買っても良いと思える納得価格だからだ。はじめから採算は度外視だ。実際のところ原価は4,900円をぎりぎり超えている。それは自分に生産能力がないからで、原価が高い分をお客に転嫁はできない。原価が5,000円なので、すみません、定価は9,000円です、とは言えない。お客にとって原価は関係ないのだ。・・・あとは企業努力あるのみだ。」

というくだりがあり、そうだよな・・・と改めて思いました。

(そういえば、今日の繊研新聞に鎌倉シャツがニューヨークのマジソンアヴニューの店を撤退する記事が出ていました。この本では、そのニューヨークのお店を出すエピソードが詳しく描かれているので、ちょっと残念です・・・)

 

また、私がアパレル企業に勤めていた時、平均的な原価は上代の25%程度でしたが、価格設定の会議では、参加者にあえて原価を知らせず、市場でいくらなら売れるのかを重視して決めていた(もちろん原価も参考にしての調整はあったと思いますけど)ことも思い出しました。

 

こう書いていくと当たり前のことのようですが、実際には、なかなか原価主義の発想(あるいは画一的な利益率の発想)から抜け出せないことが多いので、反省が必要ですね。