引き続き地方への出張が多かったので、合間をみて2015年の景気予測本を何冊か読んでみました。
その感想を書きます。
これらの本が出版されたのはまだ消費増税の先送りが決まっていない時期でしたので、そこは割り引いて考えますが、なかなか悲観的な予想が多かったです。
①「2015年日本経済景気大失速の年になる!」髙橋乗宣氏・浜矩子氏
副題は「円安・大増税・所得減・・・戦後最悪の危機の連鎖が日本を襲う」となっており、悲観論が展開されています。この三菱総研出身の二人は昨年も「2014年戦後最大級の経済危機がやって来る!」を書いており、またか・・という印象がぬぐえません。ちなみに昨年の本の副題は、「日本を円高、国債危機、株価急落の恐怖が襲う!」でした。どれも幸い実現せず良かったです。
昨年の本では円高になると言っていましたが、今年の本では、日銀が国債の購入を止めれば、通貨安・株安・債券安になると言っています。確かに日銀がそうすればですけど・・・
②「官製相場の暴落が始まる」副島隆彦氏
この人の本はどうなんだろう、と思いながら、面白半分でまたまた買って読んでしまいました。
「謀略説」がよく展開されるので、アカデミックな人はまず読んでいないと思います。副題は「相場操作しか能がない米、欧、日経済」です。ただし確かに、相場が操作されているうちは逆に、政府の意向に沿って投資活動をしていけばよいのかな、という印象を持ちました。
住商の損失をあげて「アメリカのシェールオイルやシェールガスの産出は大きなウソでありインチキである」と書いてありますが、これは信ぴょう性が??です。
③「失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ」朝倉慶氏・船井勝仁氏
船井幸雄氏のご子息と朝倉氏の掛け合いとなっている本です。比較的冷静なやりとりになっていて学ぶところがありました。朝倉氏は国債の暴落があると言っていますが、船井氏はそうは考えていないと表明しています。同氏は、日銀が実質的に引き受けているのは、政府紙幣を発行しているような状態が続いていて「掟破り」ではあるが中々優れた政策ではないか、と言っています。
④「ウォール街から日本を見れば2015世界大恐慌の足音が聴こえる」大竹愼一氏
今回読んだ本の中で一番面白かったです。
言っていることは副島氏と同じくらい過激なのですが、「ニューヨークファンドマネジャー」という肩書による説得力がありますね(これは私の偏見ですけど)。
ともかく中国経済のクラッシュは前提になっており、当然、日経平均は4000円が視野に入るとのこと。それが2015年との予想です。対応策としてはBS(バランスシート)をコンパクトにしておくことをあげています。
また、景気の話もさることながら、随所でみられる個別企業の評価が面白かったです。ファーストリテイリングとかソフトバンクは、ほら吹きでそれを実現するBSを持っていないから信用しないとのことでした。
⑤「2015年暴走する世界経済と日本の命運」三橋貴明氏
今回読んだ中で、ある意味もっとも常識的と言うか、シンプルな考えからなるまともな本でした。デフレや規制緩和により実質賃金が引き下げられるとグローバルでの企業の競争力は高まるが、国民を貧困化させ、不況が拡大する、との主張は筋が通っていると思います(私自身は規制緩和論者ですが)。「中間層の復活」は今回の選挙での民主党の主張とだぶりますね。
やはり中国でのバブル崩壊は前提としていましたが、覇権国としての中国の方向性も加味しているところが重要な観点かと思いました。
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「中国経済が崩壊する」も「国債が暴落する」もこの数年(10年以上?)に渡って言われ続けてきていますが、いよいよカウントダウンが始まっているのでしょうか。私自身は、中国につていは悲観的、国債については楽観的な見方をしています。