「賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ、という格言があるそうだが、私の考えでは、賢者の側にいたければこの両方ともが不可欠である。」
と塩野七生さんは書いています。
この格言は、ビスマルク宰相からきていることで有名ですね。
「歴史(書物と言い換えてもよい)は、自分一人ならば一生かかっても不可能な古今東西の多くの人々の施策と経験までも追体験できる」と塩野さんも言っていますが、それだけでは不十分なようです。
まだまだ読んでいる「ローマ人の物語」は、漸く29巻で、5賢帝の時代も終わりを迎えています。
5賢帝の4番目のアントニヌス・ピウスは、その治世にほぼローマにいたため、塩野さんによれば、「本社に集まってくる情報をもとに、本社に居つづけながら多国籍企業を経営するトップに似ている。」とのことです。先帝のハドリアヌスが、命を縮めてまでも帝国の全域を視察して回っていたのと極めて対照的ですね。
塩野さんは名帝の誉れ高いアントニヌス・ピウスにはやや批判的です。「歴史(間接情報)にしか学んでいない」ということで。
なにしろ「賢帝の世紀」ではなく「終わりの始まり」の巻に登場するくらいですから。
ハドリアヌスは経験にも学んでいたということで評価が高いです。
「机上で学んだことも、実体験とかみ合わせることではじめて活きた知識になるのだ。このような考え方に立つならば、正確な情報さえ得られれば適正な対策を立てられると思い込むのは、知識ないし情報の過信であり、対策を講ずるうえでは危険でさえある・・・」
正しいとしか言いようがありません。
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本も読んでいないし、自分自身の経験に学ぶ(十分に反省する)こともしていない、というのが最悪です。
最近、私は、自分自身(あるいは自分の会社)がやったことの「振り返り」を十分にしていくこともとても大事だと思っています。
ある事業に進出して失敗した、設備投資に失敗した、人材採用に失敗した、人事抜擢に失敗した、営業に失敗した、あるいはチャンスがあったのに見逃した・・・等々の反省すべきことを、ちゃんと自分(会社)の歴史として記載しておくというのはどうでしょうか。
あまり見たことがありませんけど、きっと有効です。
まず自分でやってみようと思います。