出版されたばかりの表題の本を読みました。ローランドベルガー パートナーの福田稔さんという方の本です(東京経済新報社)。
私自身、アメリカでMBAを取得後、以前からよく知っていた社長に請われて、目黒にあったアパレル企業に幹部として就職し、3年半どっぷり働きました。20年ほどの前のアパレルは、まだまだ衰退産業とは誰も思っていませんでした。
いろいろあって、その会社をクビになり、コンサルタントへの道を歩むことになりましたが、実際にアパレルで働いたことがあるというのは、一つの「ウリ」でして、現在でも弊社のクライアントで多い業種の一つがアパレルです。
ですので、この本も非常に興味を持って読みました。
「アパレルは世界では成長産業」という指摘はわかっていましたが、
日本独特の「フォロアー層の減少」という指摘は、私自身明瞭にはとらえていなかったので参考になりました。
「日本は海外と比較して、中間価格帯の「トレンド市場」が非常に大きいという特徴がある」
「その背景にあるのはフォロアー層と呼ばれる、自らの価値観が希薄で世の中のトレンドに流されやすい中間層の存在である」
この日本独特の「フォロアー層」がどんどん減っていて、百貨店、ショッピングセンターといった商業施設が厳しくなっているとのことです。
売れているのはラグジュアリーか低単価の2極化が進んでいるわけです。
確かに、私がアパレルで働いていた短い期間にも「フォークロア」「ロマンチックボヘミアン」とかいう一大トレンドがあって、みんな同じような服を売っていました(着ていました)。
海外のコレクションで生み出されたトレンドにそのまま乗っかって服を作れば売れていた時代で、ある意味簡単だったと言えます。
ところで、最近国内のアパレル消費が下げ止まりつつあるといわれています。これは、
①団塊ジュニアがアパレル消費が最も大きくなる50代に突入し始めている。
②インバウンドの恩恵を受けている。
ことによるようです。
福田さんは、これが一段落する2022年以降では、「さらに消費額の下落が顕著になる可能性が高い」との指摘していますが、納得するしかないですね。
中小アパレルはどうしたらよいか。
どの企業もECに活路を見出そうとしていますが、消費者にアピールする特徴がない商品やブランドでECというのも・・・
で、まずは、ブランドや商品を磨いてから・・・で間に合うのかどうか・・・
もちろんケースバイケースですすが、悩みは深いです。
あと、この本で、私が強く同意したのが、
「個性のないブランドにもかかわらず、販売員ががんばってお客様とのリレーションを保ち、何とか売上をつくっている」
「しかし、たいていは時給が低く、報われていない」
という指摘です。
ここを見直していくのは、一つのヒントになるような気がしてなりません。
また昔話ですが、私の仕えたアパレルの社長は、「販売員は独立してやっていける(が本社の人間は無理)」「商品の価値は50%で残り50%は販売員の価値(実際は商品は30%くらいだったと思いますが・・・)」と言っていました。このあたりは今考えても慧眼です。